Project Eden


ミカエル大天使
地球霊天上界八次元最上段階にいる、七大天使の天使長。
エル・ランティら九次元神霊とともに、地球人類を指導している。特に九次元神霊モーリャとともに、赤色光線(正義)を担当し、魔の掃討にもあたる。
アトランティス時代の末期、アガシャーの息子アモン二世として転生した。現文明においては古代ギリシャ時代のアポロン、十五世紀ドイツのマルチン・ルターとして転生し、現在「第三の計画」を引き継ぐ為、魂の一部が日本に下生している。
1.サタンと呼ばれる男
ミカエルです。地球が宇宙連合の仲間入りをしようとする前に、明かしておきたいことがあります。あなた方が「サタン」と呼ぶ男のことです。サタンという名前は、悪魔の代名詞のように使われてきました。彼のほんとうの姿を、ぜひ知っていただきたいのです。
サタンというのは、彼が最後に地上に生まれたときの名前です。彼の本来の名前はルシです。何よりも先に明らかにしておきたいのは、神がもともと、悪魔としてルシの魂をつくったわけではないということです。ルシの魂も間違いなく神の子です。神が愛を込めてつくった、かけがいのない神の子なのです。
彼がどうして悪魔と呼ばれるようになってしまったのかを、ぜひ知っていただきたいのです。そして、彼が何を考えているのかについても、知らせておかなければなりません。
ルシは今でも地獄の底で息をひそめて、地上の状況をうかがっています。自らの野望の実現を狙っているのです。
ルシの狙いがどこにあるかわかりますか?それは、地球人類が最終的に核戦争で滅びることなのです。地球ではまだ、宗教の違いや、同じ宗教であっても宗派の違いで争っています。それぞれが、自らの信じる神のために戦っています。もともと地球には国境線などなかったはずなのに、勝手に国境線を引き、どこかしらで領土問題がくすぶり続けています。それらの争いが拡大し、ついには世界大戦へと突き進み、互いに核兵器を使っての戦争になることを、ルシは望んでいます。
世界規模で核戦争が勃発したらどうなるでしょう。
地球人類が、二度と立ち直れないくらい壊滅的な結末に至るでしょう。「神は私たちを助けてくれなかった。神などいない」と言って、多くの人びとが死んでいくことになるかもしれません。神を恨みながら地球人たちが死んでいくこと。それこそが、ルシが目指していることなのです。
地獄は神の光がさえぎられているため、地獄霊たちの活動エネルギーは地上の人間たちの悪想念です。地獄霊たちは波長同通で地上の人間たちに近づいて、彼らの活動エネルギーを奪うのです。
もし、核戦争で地上の人間が死に絶えてしまったら、自分たちの活動エネルギーが枯渇してしまうはずです。自らの存亡の危機に陥るような結果を、どうしてルシは望むのでしょう?
癌細胞は、際限なく増殖するという特徴があります。最後は、癌になった人が死ぬまで増殖し続けます。結局、その人が死んでしまい、栄養分が供給されず、癌細胞自体が死ぬことになってしまうのです。最後は自らの死をまねくにもかかわらず、癌細胞は増殖をやめません。
地獄の悪魔の癌細胞のように、最終的には自らの命を失う結末に至ることを目指すのでしょうか?そんな愚かなルシなのでしょうか?
2.知天使誕生
ルシは知的に優れた魂として神につくられました。彼は、人格霊としては最も初期につくられた魂でした。神の子が持つ属性としては、特に創造力の面で、彼はずばぬけた能力を持っていました。知性と創造力という点では、他に類を見ないほど優れた能力を持つ魂だったのです。彼は自らの知性と創造力に自信を持っていました。
ルシは、オーム神霊のすることをじっと観察していました。創造力発揮という一点にしぼって、注意深く観察していたのです。しばらく観察するうちに、ポイントがわかってきました。まねをしてやってみると、自分にもできそうな気がしてきました。何度か練習するうちに、いろいろなものがつくれるようになりました。次第に大きなものの創造へと、着実に力をつけていきました。
とうとう彼は、神の創造力の極意を会得してしまったのです。神以外に誰も知らないような創造力発揮の方法を自分のものにしてしまったのです。彼は有頂天になりました。自分が大きな力をもつようになったことで、神にほめてもらえると思っていました。「ルシよ、よくぞそこまで力をつけたものだ。おまえこそ最も誇らしい私の息子だ」という言葉をかけてもらえると、期待していました。
神は、ルシのことをほめませんでした。神は愛のエネルギーですから、愛の発現のためのみ創造力を発揮しました。
ところが、ルシの創造力発揮には愛の思いがなかったのです。多くの者たちを救いたいという思いはなく、自分の力を誇示するための創造力発揮だったのです。神に愛されたくて、創造力を見せていたのです。「神よ、あなたの息子である私は、こんなに力をつけました」と、胸を張ってルシは神に言います。
神はルシに「おまえを愛しているよ」と言うだけでした。「ほめてくれてもいいはずなのに、どうしてほめてくれないのだろう」と、ルシはつぶやきました。ほめられなければ、愛される資格はないと、ルシは思い込んでいたのです。大きな力を発揮すれば神はほめてくれると思い、彼はどんどん大きなことをして見せるのでした。
神はルシをほめませんでしたが、彼の周囲の者たちは、彼の力に目を見張りました。「素晴らしい力だ。どうしてこんなことができるのだろう。ルシこそ、神近き力を持つ天使だ」「神と同じ力を持っているに違いない」「神を超えるくらいの潜在能力だろう」と、どんどん周囲から称賛の声が上がるのでした。
ルシは、「私だけではない。あなた方もやればできるのです。神から与えられた創造力を思う存分発揮することです。それこそ神が人間に望まれていることです。人間には神と同じ自由意志が与えられ、神と同じように自由自在に創造力を発揮することが許されているのですから」と、周囲の者たちに言うのでした。実際彼は、大宇宙の星間物質から惑星をつくり出すこともできたのです。
そこまでの力を見せつけられると、「この人は、ほんとうに神になれるかもしれない」と信じる者が出てくるのも、ある意味やむを得ないことでありました。それくらい彼の力はけた外れだったのです。ルシの周囲には、彼を崇拝する者が増えてきました。
3.惑星連盟
地球に人間が現れるよりずっと以前のことです。
当時、オーム宇宙には、愛と友情で結ばれた惑星連盟というものがありました。惑星連盟に所属する惑星の科学レベルは高く、あらゆる面で現在の地球より遥かに進んでいました。
ある程度のレベルに達した惑星は惑星連盟で結ばれ、みんな仲良く暮らしていたのです。惑星連盟には、所属する惑星の代表たちで構成される評議会がありました。評議会の中にも、ルシの信奉者がどんどん増えていきました。
もちろんすべての評議会メンバーが彼の信奉者になったわけではありません。私自身、「ルシの言っていることは間違っている。だまされてはいけない。神はそんなことを言っていない。自由意志も創造力も、愛を表現するための手段に過ぎない。愛に反する方向で創造力を使ったら、とんでもない反作用がくるぞ」と、大きな声で警告しました。
私の意見に賛成してくれる者もいました。しかし、ルシの周囲の者たちは、彼の力に魅了されていました。さらに彼は、巧みに説得するすべも身につけていたのです。彼の力を目の当たりにし、話を聞いていると、信じてしまうのでした。「ルシのすることが間違っているのなら、どうして神は、彼にこのように並外れた創造力を与えたのだ。こんなに力を持つ者が間違っているはずはない」と言う者まで現れるのでした。
ルシは、自分の力に酔っていました。そして、自らが支配する銀河系宇宙をつくろうと思うようになりました。
賛同者を集めて、「力を結集して銀河系宇宙をつくろうではないか」と、さそったのです。評議会メンバーの中にも賛同者はいました。自分に賛同しない者に対して、ルシは快く思っていませんでした。自分に反対する者に対し、姑息な手段を使って追い落としを図ったのです。
本来、信頼関係で結ばれていた惑星連盟の中に、彼は不信の種をまいていったのです。根も葉もないことを言って、仲違いさせるのです。とても巧妙にうそをつくので、みんな信じてしまうのでした。もともと人を疑うということを知らない人びとばかりで、ルシの言うことを鵜呑みにしてしまうのでした。
仲が良かった惑星連盟に大きな亀裂が入っていきました。ルシに賛同するグループと、反対するグループに大きく分かれてしまったのです。ルシに賛同するグループは「オリオン連合」というグループをつくっていきました。彼らは力を結集し、自分たちの銀河系宇宙の創造を始めたのです。
神が創造した本来の銀河系宇宙は、圧倒的な愛の思いの中で、陰と陽のエネルギーの合体から生まれました。
ところが、ルシたちのつくった銀河系宇宙は、恒星も惑星もすべて表面的な形はできているのですが、不完全でした。愛の思いが欠如していたのです。人間のような生物もつくったのですが、自由意志を持たないクローン人間のようなものでした。
そのように不完全な人間を、自分の意のままに操っていたのです。自らがつくった不完全な銀河系宇宙に君臨したのがルシだったのです。そして、「どうです。自分にはこんな力があるのです」と、神に胸を張ってみせるのでした。
4.宇宙大戦争
もちろんまだ地球に人類が生まれる前でしたが、当時のオーム宇宙の中で、ある程度の文化を持っていた惑星たちは、ルシに賛同する側とそうでないものに完全に分かれてしまいました。惑星全体がルシに協力するというところも出てきました。
惑星連盟の中に不信感が広がり、とうとう戦争にまで発展する事態となりました。それはルシ自身望んでいた結果でした。自らの力におぼれ、力がすべてと考えるルシは「自分の仲間にならない者たちは潰してしまおう」と思ったのです。
それまで仲良く友情に結ばれていた惑星連盟を、まっぷたつにする戦争となりました。戦争勃発の仕掛人がルシだったのです。ルシたちの連合の名前をとって、「オリオン大戦」と呼ぶこともありました。オリオンという名前がついていますが、地球に移住してきた人びとの母星を指しているわけではありません。宇宙におけるその地域の名前でもあったのです。
結局、オーム宇宙を舞台にして、大戦争を繰り広げてしまったのです。神の側に立ち、愛を重視する者たちと、ルシに従う連合軍との戦いでした。私の母星であるベーエルダはもちろん神の側であり、私は司令官としてルシの軍と戦いました。
戦争は延々と続きました。ルシは、自らがつくった大量のクローン人間を使って攻撃してきました。我々も一致団結して、力の限り対抗しました。どちらが勝ってもおかしくない戦争でした。
結局、神の側に立つ我々が、ほんの少しだけルシたちより力が上回っていたため、勝利をおさめることができました。ルシの力は巨大で、最後は私とルシの一騎打ちとなりました。ルシの放つエネルギー波は強力でした。それでも、なんとか私がルシに勝つことができたのは、「エクスカリバーの剣」を持っていたからでした。
それは、高次元の神霊から授かった、エネルギーを封印できる剣だったのです。その剣は、私のところに来るまで、オーム宇宙の名だたる人びとの手元にありました。それらの人びとをめぐりめぐって、そのとき私の手元にあったのです。
オリオンのマイトレーヤー様が持っていたこともある剣なのです。その剣のおかげで、ルシのエネルギー波を封印することができたのです。
戦争終結後、惑星連盟の評議会で裁判が行われました。ルシとその仲間たちが、戦争犯罪人として法廷に引き出されました。ルシがつくった銀河系宇宙はすべて破壊されることになりました。二度と同じ過ちをくり返さないようにと、惑星連盟に代わって宇宙連合がつくられました。
問題は、ルシの処遇をどうするかということでした。どこの惑星が彼を引き取っても、やっかいなことになりそうです。どの惑星も危険すぎる男を引き取ろうとはしませんでした。さりとて、どんな魂であっても消滅させることはしないという、オーム神霊の方針がありました。どこかで引き取らなければなりません。なかなか結論が出ませんでした。
そのとき、「私が預かろう」と申し出たのがベーエルダのエル・ランティだったのです。その一言で、ルシのエル・ランティ預かりが決まりました。みんな、自分たちが引き取らずにすんで、内心ほっとしていました。
5.ベーエルダにて
当時のベーエルダでは、エル・ランティは著名な指導者のひとりでした。
科学の分野の指導者でしたが、科学と信仰の両立を主張し、ほかの指導者たちとの意見の食い違いが表面化していました。エル・ランティに賛同する者たちが、地球という新たな惑星に大移住する計画が明かされていた頃でした。
最初ベーエルダの人びとは、当然のことながら、ルシを引き取ることに反対していました。「あんな危険な男を引き受けたら、混乱するに決まっている。ベーエルダの平和と秩序が乱れるではないか」と、口々に反対したのです。
エル・ランティは、地球の九次元霊たちに打診しました。
当時の地球の九次元霊は四人でした。ブッダ、アモール、セラビムとモーゼです。
エル・ランティからの「ルシも連れていきたいのですが、それでもよろしいですか」という問い合わせに対し、四人は顔を見合わせて黙ってしまいました。もちろんルシのことはみんな知っています。口には出しませんが、四人とも思っていることは同じでした。
「これから地球人類として新たな出発をするときに、そんな危険な男を引き受けていいものだろうか」ということでした。誰も自信を持って首を縦に振る者はいませんでした。どうしたものかと困ってしまいました。
そのときに、地球神霊であるテラが「面白いじゃないか、引き受けよう」と言ったのでした。ガイアも「私たち地球が引き受けなかったら、どこの惑星がルシの面倒を見るのかしら。受け入れましょうよ」と言ってくれたのです。地球神霊たちが、引き受けると表明したのですから、もう反対する理由はなくなりました。九次元霊たちは、ベーエルダのエル・ランティに「ルシを連れてきていただいてけっこうです」と返事を送ったのでした。
地球からOKの返事を受け取り、エル・ランティはほっとしました。実は、その返事を確認してから、ルシを引き取ることを評議会に申し出たのでした。地球という新たな環境に行くことでルシの心境も変わり、本来の神の子の姿に戻ることを期待していました。エル・ランティは、ルシを見放すことができなかったのです。
実際、エル・ランティが後見人とならなければ、ルシは宇宙の誰からも見放されてしまったことでしょう。「ルシを連れて出ていってくれるなら、その前に少しの間だけベーエルダで引き取ってもいいだろう」と、ベーエルダの指導者たちも納得したのでした。ルシとその部下数人がベーエルダに引き取られました。
ルシに本来の神の子としてのやさしさを取り戻してほしいと、エル・ランティは思っていました。それには、地上に生まれて、家族の愛を肌で感じるのがいちばんと考えました。それで、地球に旅立つ前に、親子として肉体を持つことにしたのです。そのとき、私もルシの双子の弟として生まれ、ともにエル・ランティの息子としての生活を始めました。
エル・ランティは私たちふたりを、分け隔てなく愛し、育ててくれました。ルシは成長するにつれて、もちまえの知的優秀さを発揮するようになりました。それだけではなく、人の手伝いもして、やさしい面も見せていました。彼は、もともとやさしいところもある男だったのです。私たちは、お互いの長所を認め合う、とても仲の良い兄弟になれたのでした。
6.大天使ルシフェル
いよいよ地球に旅立つことになりました。
エル・ランティは六千万人という人びとを統率しなければなりませんでした。私たち兄弟は、宇宙船に荷物を積み込む手伝いをしたり、協力してとてもよく働きました。
出発してからは、十年にも及ぶ長旅で疲れ果ててしまったり、もう嫌気がさしてしまった人びとも出てきました。それらの人びとを励ましながら、私たち兄弟はエル・ランティの息子として恥ずかしくない働きをしました。
地球にやってきてしばらくの間は、ルシは地球環境を整えるために一生懸命働きました。もともと優秀だったので、本来の力を発揮すると素晴らしい成果を挙げるのでした。誰かが困っているとすぐに解決策を見つけ、教えてあげました。そんな姿を見て、私は内心ほっとするのでした。
私は片時も、彼から目を離すことができませんでした。いつ凶暴さが復活するかわからないと、常に監視していたのです。別にエル・ランティから、監視するよう命じられていたわけではありません。私は自らの使命として、その任務に当たっていたのです。
地球のために尽くした功績が認められ、ルシはその後、「大天使ルシフェル」として、七大天使のひとりに名を連ねることになりました。
本来の彼の力からすれば当然ですか、私はルシに「よかったね」と言いました。ルシもうれしそうにしていました。私はというと、七大天使の天使長という立場が与えられました。身に余る光栄と感じましたが、うれしいというよりは、責任の重さに身が引きしまる思いになるのでした。
その後ルシは、二回ほど地球で転生しました。
二回とも、特に問題を起こすことなく天上界に還ってきました。エル・ランティは、彼に神の子本来の姿に戻ってほしいと、常に心を砕いていました。私もエル・ランティと同じ気持ちで、いつも彼を応援し、励ましていました。ルシに対し、これならもうそんなに心配しなくても大丈夫かなと、心の中で思ったことは事実でした。
地球環境がまだまだ厳しい時代で、余計なことを考える暇がなかったことも幸いしたのかもしれません。みんなで協力して、なんとか地球で生き残れるようにしようと、励まし合って進んでいた時期でした。彼も期待に応えて、一生懸命尽くしてくれたのでした。
7.地球で三度目の転生
しばらくすると、地球に他惑星の人びとが大量に飛来するようになりました。
オリオンからの移住の際には、特に問題は起こりませんでした。もともとオリオンとベーエルダはそれほど離れていません。
今の地球の感覚ではとても遠く感じますが、私たちの感覚では、オリオンはお隣さんです。文化レベルも、ベーエルダとオリオンは近かったのです。オリオンは芸術の惑星で、ベーエルダは科学の惑星です。一見接点がないように思われるかもしれません。
しかし、一定のレベルを超えた文化のもとでは、芸術と科学は兄弟のように近い関係なのです。地球でも今後、科学と芸術がともに発展してある一定の段階になれば、その感覚がわかっていただけると思います。
ペガサスからの大移住のあと、ルシに変化が現われました。
ペガサスの人びとは、それまでの移住者たちと違い、どちらかというと自由奔放にふるまうタイプが多いことは確かでした。それらの人びとを見て、彼の目の色が変わっていくのを、私は見逃しませんでした。
彼の中に眠っていたものが目を覚ましたのです。忘れていた感覚がよみがえったようでした。たとえは悪いかもしれませんが、それは、更生しかかっていた麻薬患者が麻薬常習者を見て、忘れていた感覚を思い出す姿に似ています。
私はルシに「だめだ、しっかりするんだ。あなたは誇り高い大天使ルシフェルではないか。そんなものに負けてはいけない」と、彼に肩をゆすりながら大声で言いました。彼は「大丈夫。私は負けないから、大丈夫だ」と答えましたが、その視線はまっすぐ私に向かうことなく、宙をさまようのでした。
地球の低位霊界に、神の光をさえぎる場所が広がってきました。
最初はぼんやりした曇り空だったのですが、次第に雲の形がはっきりしてきて、とうとう暗雲が立ちこめるように、地獄界が形成されてきたのです。パイトロンによって魂を増やしてから、その傾向はいっそう顕著になってきました。地獄拡大をくい止めるため、地上に生まれて人びとを正しく導くという役割を、誰かが引き受けないといけない状況になりました。その使命を誰に任せるかという話し合いが、九次元霊界で行われました。
エル・ランティは、「その役は、ルシにやってもらおう」と提案しました。エル・ランティはルシに、「なんとか頑張って、りっぱに使命を果たして戻ってきてほしい」と言いました。ルシも「わかりました」と答えたのでした。エル・ランティは心の中で、「ルシよ、この使命を果たして、もう大丈夫だということをみんなに見せてほしい」と、願っていました。ただ、心の片隅に不安があったことも確かでした。
エル・ランティが、ルシに表れた変化を見逃すはずはありません。それを、ルシが自らが吹っ切るという意味も込めて、この任務を言い渡したのでした。その決断はひとつのかけだったのです。エル・ランティの提案は了承されました。他の九次元霊たちもルシを応援して、地上に送り出したのでした。
今から約一億二千万年前、ルシは中東のとある国の王子として生まれました。
名前はサタンといいました。まだまだ科学が発達しておらず、人びとの知的水準はあまり高くありませんでした。当時、まだ石油の存在は知られていませんでした。地下から黒い液体が湧いてきましたが、その正体はわからなかったのです。ルシはいち早くその液体の性質を見抜きました。すぐに「これは利用できる」と思いました。彼は、「燃える黒い水」を、他国との戦争に使ったのでした。
地面の四方を囲むように溝を掘り、そこに石油をしみ込ませておきます。敵国との戦闘で、その囲いの中に敵の軍勢を誘い込みます。囲いの中に敵が全員入ったところで石油に火を放つのです。そのようにして敵兵を焼き殺して全滅させるという手法を取ったのです。
他国の者たちは、当然石油のトリックを見破ることはできませんでした。突然地面からものすごい勢いで火柱が立つので、みんな魔法だと思いました。周囲の国々からは、「神のような不思議な力を操る者」として恐れられるようになりました。サタンの軍勢は、次々に他国を征服していきました。征服した国での虐殺、略奪は言うにおよばず、考えられる限りの悪を尽くすのでした。
地上のルシの姿を見て、エル・ランティは何度も警告しました。あるときは大空に大きく、「サタンよ。心を改めるのだ。汝の使命は神の子として平和を守ることなり」と、警告文字を出現させたこともありました。
しかし、ルシの態度は改まることはありませんでした。ルシをこのまま放置するわけにはいかないということで、エル・ランティから私に「地上に降り、ルシの野望を阻止せよ」という命令が下ったのでした。
8.地獄の拡大
サタンが三十歳のとき、私は地上に生まれました。私は若くして立ち、いち早くサタンのトリックを見破りました。「あの火の柱は魔術ではない。よく見るがいい。燃えているのは石油である。土をかけるのだ。水をかけてはいけない。どんどん土をかけるのだ」と、全軍に命じました。
私の言う通りにすると、またたく間に火は消えるのでした。「見よ。何も恐れることはない。サタンはただのトリックを使っているだけだ。彼は神のような力を持っているわけではないのだ」と断定しました。私の軍は、次々にサタン軍を打ち破っていきました。そして、とうとう彼を追い詰めて、地上の生命を終わらせたのでした。
サタンはその後、当然のように天上界のもといた霊域に戻ろうとしました。
普通、地上で悪の限りを尽くした者が、天上界に駆け上がってくることはできません。波長同通の法則から不可能なはずです。しかし、サタンほどの力があると、思念エネルギーを集中させることにより、天上界の天使たちをなぎ倒しながら八次元、九次元レベルまで上がってくることができてしまうのでした。彼は、みんな自分より力は弱いと思っていました。実際、彼を止められる者はいませんでした。
サタンはいつも「神になりたい。神になりたい」と言います。
彼がそう言うとき、彼の念頭にある「神」は九次元霊なのです。九次元霊の中でも特にエル・ランティこそが彼の目標だったのです。そして、彼の心の中では「自分は誰よりも力が強い。エル・ランティより大きな力を持っている。私はエル・ランティを超える存在だということを証明してみせる。そのためには、エル・ランティを倒さなくてはならない」と思っているのです。だから、エル・ランティを目の敵にするのです。
サタンが天上界を駆け上がってきたとき、全力で彼をたたき落とし、地獄に封じ込んだのが私でした。どうして私にそんな力があったかというと、エクスカリバーの剣を持っていたからなのです。サタンのエネルギーを封じ込めるには、エクスカリバーの剣がないと無理なのです。それによりサタンは、地獄の底に幽閉されました。サタンがエル・ランティとともに嫌うのが私ですが、私によって地獄に封印されたことを恨んでいるからなのです。
地上でサタンを打ち負かした私が、どうして天上界でも戦うことができたのか、不思議に思われる方がいるかもしれません。私自身は八次元上段階の魂ですが、私のような者が地上に生まれるとき、肉体に宿るエネルギー量は魂全体から見たらごく一部なのです。
魂のほとんどのエネルギーは天上界に残ります。残ったエネルギー体で、普通に天上界で活動しているのです。ですから、天上界に残ったエネルギー体で、エクスカリバーの剣を使うことができたのです。
ルシの魂も、もともと巨大なエネルギー体です。サタンとして地上に生まれたエネルギーはごく一部でした。サタンが地上生命を終えたとき、実は天上界に残っていたエネルギー体もことごとく地上に宿っていたエネルギー体に吸収されてしまったのです。ルシの魂のエネルギー量自体、相当なものです。魂のエネルギー全体として天上界に駆け上がってきたというのが、このときのルシの姿でした。
ですから、ルシの魂エネルギーすべてを、私はエクスカリバーの剣で地獄に封印したということなのです。その意味では、その後、ルシが地獄で勢力を拡大することは、当然と言えば当然のことだったのかましれません。
オリオン大戦以来の部下で、地球にルシとともにやってきた者たちも、彼を慕って地獄に堕ちていきました。実際、ルシはそれらの者たちを使って、次々に力を拡大していきました。ついには、地獄の帝王ルシファーとして君臨することになったのです。かつての部下たちは魔王として、猛威をふるっています。
彼らもかつては素晴らしい力を持った光の天使だったのです。もともと力があったので、魔界でもそれなりの力を発揮することができるのです。ルシを慕う気持ちが強く、その情に流されるがゆえに、正常な判断ができなくなってしまった哀れな者たちです。
9.三次元への影響
地獄界は三次元に最も近いところにあります。
ルシファーが支配するようになって、さらに地上世界への影響力が増したことは確かです。ルシ自身、もともと知天使と呼ばれていただけのことはあり、地上の人びとの弱点を見抜く能力は抜群です。その人のどこをどう責めれば堕ちるかということを即座に見抜き、部下たちに指示を出すのです。ルシが魔界の帝王になってから、地上を去ったあと地獄に行く人間の数が急速に増えてきました。
事態を重く見て、九次元霊たちが下した決断が「アモールの三提案」の実行でした。できるだけ地獄霊の影響を少なくするために考え出された苦肉の策といえるでしょう。魔と戦った経験のない者が霊道を開いていると、瞬く間に憑依され堕ちていきます。そのようなことはルシにとって、赤子の手をひねるよりたやすいことなのです。ですから、「戦闘系」と呼ばれる、魔との戦いを経験し、魔の攻撃パターンを熟知した者だけが霊道を開いて仕事をするべきなのです。私自身そのように考えていましたから、「原則霊道を開くことを禁じる」というのは大賛成でした。
ルシが地獄の帝王になってから、地上生活はとても厳しいものとなりました。それまでは些細なあやまちに過ぎなかったことが、とんでもなく大きな悪にまで発展してしまうからです。波長同通で地獄霊が引き寄せられ、悪の方向に進ませようとするのです。どこかの時点で踏みとどまり反省しない限り、それは止められないのです。
守護霊も、なんとかくい止めようと一生懸命インスピレーションを送るのですが、地上に生きる本人が気づかないと軌道修正ができないのです。地球人は、ある意味ルシによって鍛えられているとも言えます。小さな欠点をルシに見抜かれ、そこを見事に突かれて攻撃されるからです。天上界にいただけでは、本人も気づかなかった欠点があるということが、地上で生活することにより明らかになるのです。
エル・ランティはいつも「そのようなものに影響されるような人類ではいけないのだ」と言います。私もそう思います。これほどまでに地獄界の影響が強い惑星は他にはないでしょう。
実際、宇宙連合に所属する惑星では、すでに地獄界はありません。
ですから、わざわざ地球にやってきて、厳しい環境で自らを鍛えようとする異星人もいるくらいなのです。
10.文明の盛衰
数人の九次元霊が担当して文明を興しながら、地球の人びとを導いてきました。最近の文明はだいたい一万年くらい経つと、突然の天変地異で滅んでいます。
別に九次元霊が計画して、天変地異を起こしているわけではありません。文明が爛熟期を迎えると、決まって地上の人間が発する業想念が蓄積するのです。地球をおおっているそのエネルギーを、天変地異という形で発散させるしかないのです。そうしないと、業想念エネルギーが病魔のようになり、地球神霊を弱らせてしまうのです。
ゴンドワナ文明までは数十万年から百万年もひとつの文明が続きました。
それだけ地獄界の影響を受けにくい文明だったとも言えます。原始的で、のんびりした文明だったのです。文明のレベルが上がると、物質的にも豊かになります。すると、霊道を開いていない分、物質的な執着も大きくなりがちです。人間の本来の姿が魂であることを忘れてしまうのです。地上への執着を引きずりながら地獄に堕ちた霊が、波長同通で近づき、憑依して地獄に引っぱり込むという悪循環も起こります。
レムリア文明は、かつての地球文明の中で、最も異星人たちの記憶に残っている文明です。一部の人びとはアセンションするくらいの成果を挙げた文明でした。
どうしてそのレベルまで到達できたか、わかりますか?
もちろん担当した九次元霊の指導の賜物ではありますが、芸術面から神に近づこうとしたという点も、見逃すことはできません。ルシはご存じのように知に優れ、巨大な力を持った男です。芸術というのは、ルシが波長同通で近づけない領域だということなのです。ですから、ルシの影響を最小限にくい止めることができたのです。
レムリア大陸が沈んだのは、ムー大陸を植民地とし、ムーの人びとを奴隷として働かせ、自分たちは芸術に酔いしれていたからでした。純粋に芸術を追求している限り、そのような結果にはならなかったはずなのです。
その後、ムー文明にしろ、アトランティス文明にしろ、末期はやはりルシの影響力が強大となり、滅んでいきました。特にアトランティスは、科学面でも霊的に見ても、現文明より遥かに進んでいました。それでもルシに足元をすくわれ、最後はルシの思うままになり、海底に沈んでいったのです。
「地球は、どうしてまだシフトアップできないのか?」「素晴らしい九次元霊たちが指導しているのに、どうして?」という疑問の声が、異星人たちからよく聞かれます。
特に、すでにシフトアップし、宇宙連合の仲間入りを果たした惑星の異星人たちが「自分たちはシフトアップできたのに、どうして地球はまだなのか?」と、聞かれることが多いのです。
彼らの惑星と地球には決定的な違いがあるのです。
彼らの惑星にはルシがいないのです。そのことを忘れているのです。
「ルシがいなければ、地球はとっくにシフトアップしているだろう」と、古くから地球を見てきた宇宙連合のスペース・エンジェルたちは言うのです。ルシの力とその影響力がいかに強いかということを、彼らはよくわかっているのです。
11.愛に飢えた男
どうしてそれほどまでにルシは、地球のシフトアップの邪魔をするのでしょう。
ルシは常に、自分の力を神に認めてもらいたいと思っています。
「あなたのつくった私はこんなに力があります。どうして認めてくれないのですか」と神に訴えているのです。「その方向では認めることはできない」というのが神の返事なのです。「神に認めてほしい。神に愛されたい」と彼は常に訴えています。
神はルシを愛しているのですが、ルシにはそれがわからないのです。「認めてほしいのに認めてもらえない。愛されたいのに愛されない。だったら、そんなものは潰してしまえ」と、反逆しているのがルシなのです。「愛されたい、愛されたい」と言いながら父なる神に甘え、思うようにならないと暴力をふるっているのがルシの姿なのです。
愛情が欲しいのに暴力をふるい、親を殴り続ける引きこもりの青年たちの姿は、ルシにそっくりなのです。家庭内暴力の末に親を殺してしまう若者がいます。「愛してほしいのに思うようにならない。だったら殺してしまえ」という短絡的な発想です。
これは波長同通でルシがやらせていることでもあるのです。もちろん波長同通ですから、本人がそのような思いを出すことに問題があることは間違いないのです。
地獄の底で、彼が今何を考えているか、わかりますか?
ルシは地球に来たくて来たわけではありません。
宇宙の僻地のような惑星で、地獄の底につながれているのです。
地球は彼にとって牢獄のような存在です。
「惑星さえつくり出せるほどの力を持った自分が、エル・ランティやミカエルによってこんなところに封じ込められている。こんなに力があるのに神はわかってくれない。どうしてこんな目に遭わなければいけないのだ。こんなちっぽけな惑星、壊れてしまえばいいのだ。そうすれば、この牢獄から逃げられる」というのが、彼の考えなのです。彼は地球自体の破壊を狙っているのです。
12.ルシとともに
ルシは、地球人が核戦争をすることを強く望んでいます。
実際、そうしむけるために、着々と準備をしているのです。地上の人間がいなくなってしまったら、憑依して活動エネルギーを吸い取る対象がなくなります。彼らにとってそんなことは問題ではないのです。地球という牢獄から逃げられれば、どうにでもなると思っているのです。ルシが望んでいるのは、地球がマルデックの二の舞になることなのです。地球が粉々に砕け散ることを夢見て、画策しているのがルシなのです。
でも、地球から逃げて、どこへ行こうと思っているのでしょう。彼を受け入れてくれる惑星など、宇宙中を探しても、どこにもないのです。荒涼とした、まったく生物のいない惑星にひとりでいるつもりなのでしょうか。地球にこんなにたくさんの生命がいて、受け入れてもらっていることが、どんなにありがたいことなのか、彼にはわからないのです。
誰もいない場所にひとりでいても、彼には救いの道はないのです。地球神霊が受け入れてくれたから居場所ができたのです。そのありがたさが、彼にはわからないのです。もし、「地球から出ていってくれ」と言われたら、またルシを引き連れて、どこか他の惑星を探さなくてはなりません。
エル・ランティが惑星意識になれるのに、九次元にとどまるのは、もちろん人間が好きだということはありますが、ルシのことが気になるからです。彼をあのままにして、自分だけ惑星意識になることができないのです。
私にしても、彼を見捨てることができないのです。あんなルシであっても、憎む気持ちにはなれないのです。だから、彼がまた私たちの世界に戻ってきて、神の子として謙虚に、一歩を踏み出してくれることを祈りながら、彼に対する呼びかけを続けているのです。
他の九次元霊たちもみな、「ルシが戻ってきたら、力一杯抱きしめてやろう」と、待ち続けてくれているのです。ルシのような者でさえ、その魂に宿る神性を信じて待ち続けること、それこそが神の姿でもあります。
地球の人びとにルシが迷惑をかけていることは、ほんとうに申し訳ないと思っています。
このミカエルは、いつもいつもすまない気持ちでいっぱいなのです。でも、もう少し待っていただきたいのです。なんとか、ルシとともにシフトアップし、「愛に星、地球」に生まれ変わりたいと思っています。もし、どうしてもそれがかなわぬということであれば、もうこれ以上地球に迷惑をかけられませんから、最後まで地獄に残った彼らを、他の惑星に連れていかざるを得ないでしょう。私はそこまで覚悟を決めているのです。
サタンと呼ばれる者のことがわかっていただけたと思います。地球人の皆さんにこの話をしたことはありませんでした。今まで明かされたことはなかったのです。
地球がシフトアップを迎えようとするこの時代に、皆さんに知っていただきたいと、私から話をさせていただきました。
どうか、どうか、ルシの罠にはまることなく、地球人全員がこの難局を乗り越え、シフトアップを成功させましょう。
これは異星人たちがするのではなく、地球人類が成し遂げることなのです。
一人ひとりの思いからシフトアップが始まるのです。
このミカエルの気持ちをおわかりいただけるならば、今回の人生を無駄にすることなく、地球人類が協力して、地球を愛の星にしようではありませんか。