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Project Eden

マイトレーヤー

今から約二億七千万年前、オリオン座の方向にある惑星より地球に招霊された魂である。天上界において、エル・ランティの補助という立場で光の分光などの役割を担う。アトランティス文明において、聖クザーヌスとして、神は理性的なものであるとする「理神論」を説いた。ここ一万年ほどは地上に出ていない。
地球霊天上界最上段階九次元霊、10人の最高指導霊の一人である。
役割分担:神の光の分光を担当。
転生等について:オリオン座の星から招聘。オルゴン(マイトレーヤー如来)→クザーヌス
弥勒菩薩のことがマイトレーヤーと称されることがあるが、本書のマイトレーヤーとはまったく別の存在である。

1.シフトアップに向けて

私はマイトレーヤーです。
この章では、アトランティス文明を振り返ってみたいと思います。

アトランティスは現文明の直前の文明であり、現文明との類似点もあり、学ぶべきことが多い文明です。
ムーやレムリアほど古い文明ではないということもあり、アトランティスについてはさまざまな伝承が残っているようです。

ただ、その中には事実とは異なることも多く、大切なことが見落とされているようにも思います。
ここで、アトランティス文明を立ち上げた責任者として、私から皆様にお伝えしたいと思います。

宇宙の中で、霊的進化に適したときというのがあります。
「水瓶座の時代」がそれに当たります。
ムー文明のあと、私たち地球九次元霊は、「次の水瓶座の時代には、地球をシフトアップさせようではないか」ということで一致していました。

私たちがいくら頑張って地球を次の段階に上げようと思っても、宇宙に追い風が吹いていないと、なかなか実現は難しいのです。
逆に、追い風のときであれば、次の段階に行きやすいということでもあります。

次の水瓶座の時代というのは、今の文明でいえば西暦二〇〇〇年を過ぎたあたりから始まります。
アトランティス文明を立ち上げるにあたり、次の水瓶座の時代まで、まだ一万年以上ありましたが、「余裕を持って水瓶座の時代を迎えよう」と、私たち九次元霊は考えていました。

レムリア文明とムー文明では反省点もありましたが、それなりの成果を挙げることができたと、九次元霊たちは考えていました。
ムー文明は、素朴なアニミズムを通して人びとの心に、神に対する信仰心を植えつけることに成功しました。

ただ、ムー文明の科学レベルでは、シフトアップしても、進んだ異星人たちの科学技術を受け入れることは困難だったと思います。
そこで、科学的進歩を念頭に置いた文明というのがアトランティス文明の課題でした。

ですから、「アトランティス文明では、最初から科学と信仰を両輪として進もうではないか」ということも、九次元霊たちの申し合わせで決まりました。
それまでの文明はあまり科学を前面に押し出したものはありませんでした。
ただ、シフトアップを目標とすると、どうしても科学を発達させる必要がありました。

科学は、九次元ではカイトロンが担当しています。
それまであまり出る幕がなかったカイトロンでしたが、彼にも仕事をしてもらわなくてはなりません。
私はカイトロンに「そろそろ出番だよ」と言いました。
「いよいよ私の力を発揮するときですね」と、カイトロンも張り切っていました。

私は、オリオンから、九次元になったばかりのマヌやカイトロンを連れて地球にやってきました。
マヌはレムリア文明である程度の成果を挙げました。
今度はカイトロンの番でした。

2.クートフーミーの誕生

アトランティス大陸は、七万年以上前から存在していました。
人間が住むようになったのは四万年前頃からですが、ほとんど狩猟と漁業の生活でした。
ムー大陸に比べると、ほとんど未開に近い状態でした。

今から一万六千年前のアトランティス大陸に、カイトロンがクートフーミーとして生まれました。
クートフーミーは、普通は当たり前と思われている植物の形態変化に着目しました。
発芽し、茎が伸び、葉が茂り、花が咲くという変化に注目したのです。

クートフーミーが研究した結果、植物の形態変化に巨大なエネルギー変換が行われていることがわかりました。
彼はさらに研究を続け、植物の生命エネルギー変換時のパワーを取り出すことに成功したのです。
科学担当の九次元霊が地上に肉体を持ったといっても、これらの研究が簡単に進んだわけではありません。彼は、植物の生命エネルギーからパワーを抽出し、電力に変換できるようになるまでに三十年近くの歳月を要したのでした。

クートフーミーの研究により、アトランティスの人びとの生活環境は大きく変化しました。
狩猟と漁業の生活から、電化製品を使いこなす生活になったのでした。
窓辺に植物の球根が入った容器をたくさん並べ、そこから発芽エネルギーを抽出、それで一家の電力をまかなうことができました。
クートフーミーの業績は、アトランティスの科学発展への方向づけとしては申し分のないものでした。

その後、ムー大陸が沈み、ムーの人びとがアトランティス大陸にも逃れてきました。
ピラミッドパワーをはじめとして、ムーの科学者たちの科学技術も加わり、アトランティスの科学レベルはさらに高度な発展を遂げました。

3.理神論

その後、私自身がアトランティス大陸に降り立つことになりました。
それまで私自身はあまり地上で人びとを指導する機会がありませんでした。
久々の地上での指導ということもあり、前もって綿密な計画を立てました。

まず、影響力のある立場で生まれなければなりません。
やはり、王家に生まれることにしました。
カイトロンのおかげで、すでに科学はある程度発達していましたので、科学と並んで信仰の重要性についても、人びとに説くことにしました。
私は王であり、法を説く者として生まれたのです。
聖クザーヌスという名前で伝えられているのが、アトランティス時代の私です。

当時私が説いた教えは、「理神論」と呼ばれるようになりました。
「科学と神の愛の心の両方を追求していくことが、本来の創造主のご希望である。両方を追求せよ。そうすれば、どちらにも偏らず、正しく進化し、成長を遂げていくことができる」と、説いたのです。
「科学と信仰、両方バランスを取りながら進みなさい」という教えでした。
私自身が前もって計画していた通りの指導ができたと、天上界に帰ってきた当初は思っていました。

私は「神は愛のエネルギーそのものであり、愛こそが大切なのだ」ということも、きちんと言ったはずでした。
その後のアトランティス文明の流れの中で、この愛の部分だけが欠落して伝えられることになろうとは、当時、思ってもいませんでした。

4.アトランティス中期

アトランティス文明は、前期、中期、後期の三つに分けられます。
カイトロンと私が出たのは前期です。
科学的発展の方向づけができたという点で、ある程度成功したと思っています。
ただ、どうしても科学的発展を追求するあまり、その後、愛の教えが忘れ去られる傾向が出てきました。

中期の課題は、軌道修正にありました。
もう一度、本来の信仰と科学の両方のバランスを取る必要があったのです。
それまでの知識を整理するとともに、本来の路線に戻すために、九次元からブッダが地上に誕生することになりました。

彼はトスという名前で、やはり王家に生まれました。
地上では「全知全能のトス」と称されるように、万能の天才としてその能力を発揮しました。ただ、どうしても知的な方向に向かう傾向がありました。これは、彼の魂自体がもともと持っている性向でもありました。結局、愛の教えの復興という面では、不満が残る結果となりました。

愛が忘れ去られるのとは対照的に、科学はさらに発展しました。
レムリア、ムーから受け継がれているピラミッドを用いての宇宙エネルギーの利用は、アトランティス文明でピークを迎えました。アトランティスでは、宇宙エネルギーをいかに増幅させるかという点から、さらなるアプローチがなされました。水晶の持つエネルギー増幅作用が探究されたのもこの時代でした。

現文明では、水晶というと、一見科学とは無関係な鉱物と思われていますが、アトランティスではそうではありませんでした。水晶以外にもさまざまな宝石の効用も研究されました。
当時、宝石は現在よりも大きな結晶として採取されていました。
宝石をさまざまにカットすることで、そのパワーが増幅されることも明らかになりました。
科学者たちは、クリスタルを用いての霊能力増幅方法の探究に一生懸命だったのです。

アトランティス文明は、シフトアップへの準備文明と位置づけられていたこともあり、霊道を開いている人がとても多かったことも事実でした。それも天上界の方針だったことは確かです。

肉体も現文明の肉体のように粗い波動ではなく、もう少し精妙でした。
さらに科学の発展で、重力に対抗するような力を利用することも可能でした。
小さなクリスタルを何個かつないだブレスレットを身につけることで霊的パワーが増し、空を飛ぶことさえ可能だったのです。
反重力の飛行船などもできるようになりました。
人間が空を飛ぶことができたのは、肉体波動が精妙だったこと以外にも、反重力を利用することができたからでした。

5.神官の存在

トス以降、王家の力は次第に弱くなり、象徴的な存在になっていきました。
逆に力を持ってきたのは神官でした。
現文明の人びとには奇妙に思われるかもしれませんが、当時の神官は、みな科学者でもありました。

逆に言うと、科学者で霊的能力の高い者たちが神官となったのです。彼らの科学的研究は、霊的能力開発に直結していたのです。霊的能力に優れているほど神近き者であり、優秀であると思われていました。神近き者が政治を行うという点では、一種の祭政一致だったといえるでしょう。

当時の科学者は当然のことですが、現文明のように唯物思想に流れることはありませんでした。
もちろん、人間の本来の姿は魂であることや、輪廻転生も一般的に認められていました。
当時の人びとは相当高度な霊的認識力を持っていたのです。

彼らにとって、神は霊的パワーの源泉のような存在でした。
いかに神から霊的パワーを引いてくるかということが重要課題だったのです。
すでに、「神は根源的愛のエネルギー」という認識はまったくなくなってしまっていました。

神官の登用は、最初は能力試験により厳正に行われていましたが、次第に世襲制となっていきました。
認識力や霊的能力が特に優れていなくても、神官の家柄に生まれたというだけで神官となったのです。
当時の神官は、権力とともに多くの利権も握っていました。
神官たちで構成される評議会メンバーになることが、支配階級のトップになることを意味していました。

6.天上界の巻き返し計画

アトランティス文明前期に私が説いた教えは、愛の部分だけが完全に抜け落ちた形で伝えられていました。
地上の人びとの自由意志による選択の結果ではあるのですが、魔界のルシファーの力が働いていたことは間違いありません。知らず知らずのうちに愛から遠ざかる方向に誘導されてしまっていたのです。

アトランティス後期になると、「愛」という言葉にアレルギー反応を起こす者さえ出てきました。
人びとが、愛を受け付けなくなってしまった結果でした。

天上界から地上を見ると、人びとの暗い想念の曇りがアトランティスをおおい始めています。
アトランティス文明にたそがれが迫っていることを知らせているかのようです。
なんとかこの状況を打破しないと、もう手遅れになってしまうでしょう。今ならまだ間に合うかもしれません。
天上界は一縷(いちる)の望みをかけて、計画の練り直しを行いました。

もともとアトランティス文明は、最後にアモールが地上に降り、愛で人びとをまとめ上げるという計画でした。
しかし、こんな逆風の中を地上に降りることになろうとは、アトランティス文明立ち上げ当初は、九次元霊の誰も予想もしていなかった事態でした。

ほんとうに申し訳なく、情けないことですが、「私が説いた理神論がもとで、地上がこんなことになってしまって・・・」と、私が言うと、他の九次元霊たちは、「マイトレーヤーが悪いわけではない。その後の私たちの指導が至らなかったのだ」と口々に言ってくれました。
ブッダは「私がもっとしっかりと方向転換させられていたら、こんなことにはならなかったのに」と肩を落としました。

なんとなく暗い雰囲気になりそうな中、エル・ランティが「アモールの愛のバイブレーションで、人びとの中に眠っている愛の思いを揺り起してほしい。何よりも、すべての人間が愛そのものである神からつくられた神の子なのだから、アモールのバイブレーションに気づかないはずはない。忘れてしまっているだけなのだ。アモール、なんとか地上の人びとの中に眠る神性を目覚めさせてほしい」と、力強く励ますのでした。

アモールは「私自身の全身全霊を込めてやってきます」と、彼らしい柔らかな口調で、力強く答えてくれました。

アモールがどのような環境に生まれるかということが問題になりました。
もともとは王家に生まれる予定でした。より影響力が大きいのは神官の家系に生まれることかもしれません。
しかし、当時すでに評議会の雰囲気は相当悪くなっていました。その中で愛を主張しても、受け入れられないことは明らかです。やはり、王家に生まれて、一般の人びとに愛の教えを説くほうがいいということになりました。

王を支える王妃としては、やはりアモールの魂のパートナーが出ていかなければなりません。
現文明でイエス・キリストの母として出た聖母マリアが、このとき王妃として出ることになりました。
アモールを支える存在としては、魂のパートナーである彼女以外はあり得ないでしょう。

私たち九次元霊たちは、アモールに全幅の信頼を寄せていました。天上界全体でバックアップする体制もつくりました。
しかし、地上には愛を受け付けない空気があふれています。実際アモールが、地上でどこまでできるかわかりません。さまざまな事態が起こることを想定し、前もって対処しなければなりません。魔に強い者で周囲を固める必要があります。

エル・ランティの意見で、まずミカエルがアモールの息子として生まれることになりました。
アモールがアトランティスの立て直しに成功したら、そのあとを継いでもらおうということです。
もし万が一、アモールが失敗に終わるようなことになったら、息子をアトランティス大陸以外の土地に逃れさせようという意図もありました。

もしアモールが失敗するとしたら、地上は魔が猛威をふるっている状況でしょう。反作用としての大規模な天変地異が予想されます。天変地異が起こる前に、ミカエルを生き延びさせ、その後の文明への橋渡しをさせようと考えていたのです。
「成功しても失敗しても、彼ならなんとかやってくれるだろう」という、エル・ランティのミカエルに対する信頼が表れた人選でした。

7.戦闘系の巫女

地上に九次元霊がいなくなったとき、誰に天上界の意思を伝えるか。それは大きな問題です。もともと天上界の意思を受けるのは、男性より女性のほうが適しています。女性性自体に受容するという性質があるのです。陰陽という観点からも、陽からのエネルギーを陰が受け入れ、言葉に変換するという理にかなっているのです。巫女やチャネラーに女性が多いのはそういう理由なのです。

ただ、巫女は古来、神殿のような神聖な場所にこもって通信を受けるのが一般的です。周囲を守られた聖域で、全身全霊を込めて天上界からのメッセージを受け入れることに徹するのが巫女の仕事です。地上に魔の勢力が強い状態では、なかなかそのような聖域を維持するのは難しいのです。そんなときは、魔に強い巫女が必要です。しかし、巫女という仕事の性質上、魔と対峙することには慣れていないものです。

レムリア時代に、マヌとともに地上に出たアマーリエは、オリオンにいた頃から巫女能力に長けていました。霊界からの通信を受けたり、異星人からの通信を受け取る能力を持っていたのです。それは、もともと彼女の魂が神から授かった能力でした。それを生かして、レムリア時代は異星人とのコンタクティとしての役割を果たしたのでした。

一方、アマーリエ自身オリオン時代から、女性としては活発なほうでした。レムリア文明のあと、彼女はミカエルに弟子入りする形で、赤色光線の修行をしていました。その中で、実践を通してルシファーとの戦い方を身につけていました。魔がどのように攻めてくるかということを、体験から熟知していたのです。アトランティス後期のこの頃になると、ミカエルから見ても信頼できる戦闘系の魂となっていました。一見相容れないふたつの性質を兼ね備えた「戦闘系巫女」が誕生したのです。

地上において実際に、魔と戦いながら天上界からの通信を受け取るということを試したわけではありませんでした。しかし、ミカエルは「彼女なら絶対できる」という確信がありました。ミカエルは、もしアモールや自分がいなくなった場合、あとを託すのはアマーリエ以外いないと思っていました。九次元霊たちはミカエルの提案に同意しました。結局、アマーリエはミカエルの妹として生まれることになりました。

8.アガシャー大王

アモールはアモンという名前で王家に生まれました。
アトランティス後期のこの時代になると、王家は完全に象徴的存在となっていました。

アモンは二十代で王位につきました。
このとき、彼はアガシャーという名前を名乗るようになりました。
アガシャーは月に一度、王宮近くの広場に人びとを集めて説法をするようになりました。
その広場は十万人以上収容できるほどの広さがありました。
アガシャーはそこで愛について説くのでした。

彼は、「神は愛そのものであり、すべての人間は神の子であり、愛を表現しなさい」と説きました。
人びとは彼の美しい言葉をうっとりと聞くのでした。
アガシャーはその高潔な人柄とともに、説法の内容の素晴らしさで「アガシャー大王」と呼ばれるようになりました。
アガシャー大王は、王妃とともに、国民から絶大なる尊敬を集めるようになったのです。

評議会の神官たちは、アガシャーのことをよく思っていませんでした。
彼らは「愛」という言葉を聞くと、全身にじんましんができるほどの拒絶反応を示すのでした。
聖クザーヌスの伝統的な理神論の教えに反し、人びとを惑わす教えを説く者として、アガシャーを異端視する動きが、評議会を中心に起こりました。

また、すでに王家には権力もなく、アガシャー大王自身権力に対する欲などなかったにもかかわらず、評議会の神官たちは、アガシャー大王があまりにも人気があったので、自分たちの権力を脅かすものとして、脅威を感じていたのも事実でした。
当時の神官たちのすべてが、アガシャー大王を敵視していたわけではありません。
アガシャー大王の説く法の素晴らしさがわかる者もいました。

しかし、表立ってアガシャーに対する賛辞を贈ったりしたら、評議会の大神官たちの反感を買います。
そればかりか、異端に組する者として目をつけられ、我が身に危険が及ぶことにもなります。
当時の神官たちは、他人の想念を読む能力を持つ者も数多くいました。
アガシャー派の神官たちは、それらの者たちに自分の心を読まれないように、常に注意していたのでした。

9.評議会議長

当時の評議会は、現在の国会と内閣、さらに裁判所の機能も備えていました。
つまり、現在のような三権分立ではなく、すべての権力が評議会に集中していたのです。
評議会のトップは議長です。ですから、評議会議長は、アトランティス全土の権力を一手に握っていたことになります。

評議会議長は、自らの権力を脅かす存在としてのアガシャー大王を抹殺しようと思っていました。
それを合法的に行ったとしても、アガシャー大王支持者たちの、その後の猛烈な反発が予想されます。
アガシャー大王の人気は相当なものだったのです。

どうにかして、支持者たちも含めてこの世から消してしまいたい。そう思うようになっていました。
そこで、自分の配下にある秘密警察組織を駆使して、アガシャー派の国民の動向について、調べさせていました。
どこかの時点で、一網打尽に逮捕して、処刑しようと考えていたのです。

評議会議長は、科学知識とともに、相当な霊的能力も持っていました。
もともと、自らの野望実現のためならば、どんな手段もいとわない人間でした。
そのようにして、ライバルたちを次々に蹴落とし、権力の頂点に君臨するようになったのでした。

彼は、自己実現のために魔術を使うこともありました。
魔術は霊的能力に属しますが、特に魔界の協力を得ているものを黒魔術と呼びます。
悪魔と取り引きをして、その力を借りるようになってしまっている状態です。

黒魔術に手を出すと、神から保証されている魂の自由意志を、魔界のものに売り渡してしまうことになります。
評議会議長も、魔界の力を借りて権力を手にしていたのです。
彼の心は、すでにルシファーの支配下にありました。

評議会の決議として、「アガシャーは、異端の教えを広めようとする悪魔の手先である。アトランティス国民は彼の言うことを信じてはならない」という決定がなされました。
アガシャーと彼を支持する人びとは、こともあろうに、悪魔の手先として迫害されるようになったのです。

10.アモン二世の脱出

地上の様子をじっと見守っていた九次元霊界でしたが、そろそろ決断する時が迫っていることをみな感じていました。
ミカエルはアモン二世として生まれていました。

アガシャーから彼に引き継いで、アトランティスを復興させる計画が実現困難な状況にあることは、誰の目にも明らかでした。
このままでは、ミカエルをはじめとして、アモールを盛り立てるために地上に降りていった、大量の光の天使たちまで全滅になります。

九次元霊界は苦渋の決断を下すことになりました。
アモン二世とその周囲の光の天使たちを、アトランティスから脱出させることにしたのです。
彼らは闇夜に飛行船で脱出することにしました。
大西洋を東に向かい、アフリカ大陸の北、現在のエジプトの地に着陸しました。

アガシャーの娘のアデレード姫は、幼い頃から巫女能力を発揮し、天上界からの通信を正確に地上に伝えていました。
もちろんアデレードというのは、地上に降りたアマーリエの名前です。

実は、アデレードは評議会議長から危険な存在として目をつけられ、このときにはすでに牢に入れられていました。
このままではアモン二世もとらえられてしまうことが明らかだったので、その前にアトランティスから脱出させたのでした。

九次元霊界としても、ただ黙って見守っていたわけではありません。
アガシャーを見殺しにしてはいけないと、みんな思っていました。
なんとかアトランティスの状況を打開しようと手を尽くしたのですが、すべてが失敗に終わっていったのです。
地上が、完全にルシファーの跳梁を許している状況だったのです。

正直言って、エル・ランティも私も、アトランティスがこのような末期を迎えることは、当初は予想していませんでした。
しかし、私たちは最後まであきらめませんでした。
あきらめないことが神の子の証しです。最後まで、絶対に希望を捨てないのが天上界の者たちなのです。

11.広場の惨劇

アトランティス時代、ルシファーはベリアルと呼ばれていました。
アガシャーとアガシャーを支持する国民は、「ベリアルの子」として次々に逮捕されていきました。
評議会の裁定で、彼らは生き埋めの刑に処せられることが決まりました。
アガシャーが毎月説法をしていた広場に、巨大な穴が掘られました。
アガシャーとその支持者全員が穴の中に埋められ、上から土がかけられました。

地上救済のために降りていった九次元霊と光の天使たちが、悪魔の汚名を着せられ、葬り去られたのです。
天上界の者たちは、悲しみに打ちひしがれながら、なすすべもなくその光景を見つめていました。

私たち九次元霊全員で、戻ってきたアガシャーの霊体を迎えました。
アガシャーは意気消沈していました。
「神のお役に立てず、申し訳ありませんでした」と言うのがやっとでした。

私たちは「いや、あなたはよく頑張った」と、彼の労をねぎらうのでした。
実際、あの状況では、他の九次元霊の誰が降りていったとしても、同じ結果になっていたでしょう。

12.牢獄の王女

王妃をはじめとして、アガシャーの周囲の者たち全員が処刑されてしまった中で、ひとりだけ命を助けられた者がいました。

アデレード王女です。彼女はもともと気が強い性格でしたが、巫女として、天上界の言葉を堂々と伝えていました。もちろん彼女とて例外ではなく、アガシャー派として逮捕されていました。とらえられても意気消沈することなく、「もし私を殺したら、大変なことが起こる。あなた方全員ただじゃすまないから」と言うのでした。以前から、彼女の言うことが実現することを目の当たりにしていた評議会の神官たちは、なんとなく薄気味悪く、彼女だけは処刑できず、牢獄につないでおいたのです。

評議会議長には、彼女を生かしておく別な目的がありました。ルシファーは、評議会議長を完全に自分の支配下に置いていましたが、自分自身は地獄の底に封印されていることに変わりありません。彼は自分自身の地上での肉体が欲しかったのです。地上に肉体を持って生まれることがルシファーの願いだったのです。

普通は、そんなことは不可能です。地獄から地上に生れることはできません。アデレードがもともと多産系であり、巫女として、霊的にも受容能力に長けていることを、ルシファーは見逃さなかったのです。彼女に評議会議長の子どもを生ませることで、自分は地上に生れることができると、踏んでいたのです。

評議会議長は、アデレードに、自分の言う通りにするよう迫りました。アデレードは、彼がルシファーに魂を売り渡していることを知っていました。そのため、どんな拷問を受けようとも、絶対に首を縦に振ることはありませんでした。実際、彼女は相当拷問を受けていました。ルシファーの言う通りにするくらいだったら死んでしまおうと、覚悟を決めていました。

13.あきらめない者たち

アガシャー大王たちが広場で生き埋めにされても、一握りの光の天使たちはまだ地上に残っていました。彼らは、地下組織のようなものをつくり、お互いに連絡を取り合っていました。

神官の中にも彼らの仲間がいました。その神官は、自分の心を読まれないように、評議会メンバーに近づきました。彼は、アデレード姫がまだ生きていて、牢獄につながれているという情報をつかみました。そして、その情報を仲間に伝えました。

「アデレード姫を救い出し、天上界の意向を伝えてもらいながら、なんとかアトランティスを復興させよう」と、みんなの希望がつながりました。自暴自棄になりかかっている者もいましたが、最後の望みにかけようではないかということになったのです。

その後、海に突き出た崖につくられた牢獄に、アデレード姫がつながれていることが判明しました。夜陰にまぎれて、数名の者たちで、王女を救出する計画を立てました。

事前に下見をして、牢獄がどのような構造になっているかを調べました。最新鋭の科学技術を駆使して、牢獄からの脱出はほとんど不可能な仕組みになっていることがわかりました。霊的能力に優れた者と、科学技術のエキスパートが事前に綿密な打ち合わせをして、計画を実行に移しました。もちろん、天上界の全面的協力があったことは言うまでもありません。

彼らのことを、天上界では、「あきらめない者たち」と呼んでいます。どんなことがあっても最後まで望みを捨てない、天上界が信頼する者たちです。

実は、ムー時代の最後も同じような状況があったのです。アマーリエは、ラ・メンタスを補佐するために生まれていました。ラ・ムーやラ・メンタスが地上を去ったあと、とらわれの身となったアマーリエを助けた者たちがいたのです。その者たちが、アトランティス時代の末期にも生まれ合わせて、アデレード姫として生まれたアマーリエを、助けてくれたのでした。

助けてもらったアデレードは、彼らに感謝するとともに、天上界の意向をどんどん彼らに伝えることを誓うのでした。絶対にルシファーなどには負けないという強い思いによって、彼らはつながれていました。

14.巨大クリスタルの爆発

アトランティスの後期になると、エネルギーの事情は、初期とはまったく違ったものになっていました。
もう植物の球根を窓辺に並べる必要はなくなっていました。
町の中には、ところどころにピラミッドがあり、そのピラミッドを介して宇宙エネルギーを直接引いていたのです。

さらにクリスタルを用いてエネルギーを増幅させるとともに、エネルギーを蓄積することも可能になっていました。
ピラミッドとクリスタルを組み合わせて、宇宙エネルギーを利用するという、現文明から考えたら、有害な排出ガスをまったく出すことのない、100%クリーンなエネルギー環境でした。

アトランティス末期となり、ピラミッドとクリスタルを軍事目的で利用しようとする動きが出てきました。
もともと宇宙エネルギーは、神の愛のエネルギーです。
軍事目的に利用しようとすること自体、相当な反作用が起こることが予想されます。
しかし、もうそのような正常な判断が働く状況ではなくなっていました。
権力の中枢にいる人びとの心は、暗い想念に支配されていたのです。

新兵器をつくる目的で、巨大な水晶クリスタルが設置されました。
水晶クリスタルにはエネルギー増幅機能があります。
神の愛のエネルギーとそれに反する暗いエネルギー、どちらも水晶クリスタルは増幅して蓄積します。
その巨大なクリスタルには、人びとの暗い想念エネルギーが大量に蓄積されていました。

そのクリスタルが、あるとき、ちょっとしたきっかけの事故で爆発してしまったのです。
増幅されたマイナスエネルギーが解放され、それがアトランティス大陸沈没の引き金を引くことになったのです。

15.アトランティスの最期

巨大クリスタルの爆発を合図にしたかのように、アトランティス大陸の沈没が始まりました。
アデレード姫はあきらめない者たちとともに、丘に向かって走っています。
丘の上には飛行船が待機しています。
その飛行船に乗って、逃げようとしていたのです。

しかし、地面が瞬く間に傾斜し、海が陸を飲み込もうとしています。
必死にもがくのですが、もう少しのところで飛行船に乗ることはできませんでした。
あきらめない者たちとともに、なんとかアトランティスを復興させようとしたのですが、時間がもう残されていませんでした。

落ちていくアデレード姫を見つめている者がいました。評議会議長です。
彼は、反重力を身につけた手下を使って、アデレード姫を救い出し、自分のいる城まで連れてこさせたのです。
アデレード姫は再びとらわれの身となってしまいました。

肉体を持って生まれたいという、ルシファーの望みを実現させるために、彼女は助けられたのでした。
そんな目的のためにこの世に生かされていることは、アデレード姫には耐えがたいことでした。
彼女は、見張りのすきを狙って身を投げる決心をしました。
そのチャンスは、ほどなくやってきました。
「今だ」と、海に向かって身を投げるアデレード姫でした。

またしても、それを見ていたのは評議会議長です。
彼は、素早く大きな黒い鷲に姿を変えて、急降下でアデレード姫をつかまえようとします。
すると、突然、あたりに白い霧が立ちこめてきました。まるで視界をさえぎろうとするかのようです。

あきらめない者たちも、ほとんど死んでしまいましたが、神官で、霊的能力がすぐれている者がひとり、やはり反重力を利用して生き延びていました。

彼が瞬時に姿を変えて白い霧になり、黒い鷲を包み込むようにしていたのです。
もがく鷲をしっかりつかまえて、そのまま落下するのでした。
彼も力を使い果たし、評議会議長とともに、地上生命を終えることになりました。
アデレード姫も、地上を去ることになったのは言うまでもありません。

間もなく、アトランティス大陸も海中に没することになりました。
バミューダ海域の海底には、砕けた巨大クリスタルが沈んでいます。

そのクリスタルは、海中に没して一万年近く経っても、いまだに影響力を発揮しています。
「バミューダトライアングル」と呼ばれ、航海する船や、上空を飛行する旅客機が突然姿を消したりするのは、海底のクリスタルにより、その領域の時間と空間がゆがめられているせいなのです。

6.アトランティスの反省

レムリアやムーと同じように、アトランティスもまた、海中に没することになりました。今回は、次の水瓶座の時代にシフトアップするという明確な目標がありました。そのために、余裕を持ってシフトアップさせようと、立ち上げた文明でした。結果的にそれが成功しなかったことは、九次元霊たちにとってはとても残念でした。

それまでの文明は、芸術や悟性という課題を決め、それをクリアしてきました。アトランティスは、シフトアップに向けて、総合的にレベルを上げようということでした。科学も霊的能力においても、ある程度レベルが上がりましたが、結果的に失敗に終わってしまいました。

何が原因であったかを徹底的に議論する時間がありませんでした。次の文明を興し、なんとしても成功して、シフトアップさせなければなりません。ただ、いくつかのポイントは、九次元霊の間の共通認識として出てきました。

まず、科学よりも先に、徹底的に愛について学ばなければなりません。科学の便利性にのみ目が奪われ、最も大事な愛がおろそかになってしまったのがアトランティス文明でした。

霊道を開かせることは必要最低限にすべきでした。レムリアやムーである程度成功していたため、九次元霊たちにも油断があったことは否めませんでした。霊道を開いている者が権力の中心にいると、とんでもない結果になるということを、いやというほど思い知ったのがアトランティス文明でした。

地球人がまだまだ未熟であることを、またしても魔界のルシファーにより思い知らされる結果に終わりました。次の文明では、地球の寿命から見ても、なんとしてもシフトアップさせたいというのが、私たち地球九次元霊全員の願いです。気を引きしめて、心をひとつにして頑張ろうと誓う、九次元霊たちだったのです。

17.エジプトのアモン二世

最後に、エジプトに逃れたアモン二世について、ふれておきたいと思います。
部下や友人たちと飛行船に乗って、エジプトに着いたアモン二世は、その後アモン・ラーと名乗り、太陽信仰を説く王となりました。

アトランティスからピラミッドを伝えたのは、もちろん彼らです。
現文明では、国王の墓のように思われているかもしれませんが、ピラミッドは宇宙エネルギーを引いてくる設備だったのです。

また、現在ではどのようにピラミッドがつくられたのか謎になっています。古代エジプト人が、どのように石を運んだのか、現代人にはわからないでしょう。

彼らは、肉体労働で石を運んだのではないのです。今で言う「念動力」という霊的能力と反重力装置とを使っていたのです。
ですから、目で見ると、石が空中をビュンビュン飛んでいるのです。そして、正確に積み上げられて、あの巨大ピラミッドは建設されたのです。
そのような能力や装置も、伝える人間が途絶えてしまうと、まったく謎になってしまうということなのです。

とりあえず、ミカエルがアモン・ラーとしてエジプトに生き残ってくれました。
今後、どのような文明を興すことによって、最後にシフトアップに向かうか。エル・ランティを議長として、早急に会議を開く九次元霊たちでした。

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